さわがしい静(しづ)の日記

20代後半から看護師めざす人の自由な日記。自作小説はイタいかも。

小説「男巫」

小説「男巫」3 ~障子に映る残酷~

家に着き夕食の時間になると、父母と太郎は3人で食事を囲んでいた。 障子に隔てられ、1つ隣の部屋では帰一が1人で食べていた。 帰一は、みぞおちか心かどこだか分からない場所がまだ痛む気がして、そっと胃をさすった。 障子にはぼんやりとあの3人の陰が…

小説「男巫」2 ~痛むみぞおち~

ある日突然、嫡男の太郎が風景画を描きたいと言い出したので、帰一は城の近くの橋までおともをすることになった。 2人は橋から少し離れた所に座った。 アーチをえがいた趣のある橋と、その下の池。太郎はその風景とにらめっこしながら、濃い墨、薄い墨をつ…

小説「男巫」1 ~庶子の傷~

ある地に少年がいた。ただでさえ庶子とのことで、親からも親戚からも除け者だった。その上、なんか変な子とあちこちから噂され、背を丸めて閉じ籠って暮らしていた。 松平帰一と名乗るその少年は、あちらこちらから武家らしからぬ「奴隷」というあだ名をつけ…